第4章 犠牲
次の日。
僕は秀吉の部屋の前にいた。
絶対に僕は譲らない。
秀吉が部屋を出てけと言っても、秀吉が諦めるまで絶対に出て行かない。
そう強く心に誓って、襖を叩いた。
「秀吉。僕だ。」
返事はない。
そりゃそうだろう、別に構わない。
襖に手をかけて、開けた。
秀吉は外を見ていた。
僕の方を振り返りもしない。
そんなこと、もう慣れてしまった。
「秀吉。僕がどうしてここに来たのかわかるね?」
「貴様も欲しくなったか?朝鮮が。」
こういうイヤミも、もう慣れた。
「いらない。」
「………。」
「僕は、朝鮮はいらない。」
「なぜだ?」
「失うものが多過ぎるからだ。」
「得るものは多い。」
「そうかな。僕はそう思わないよ。」
「半兵衛、貴様は臆しているのか?」
「違うよ。」
「ならば、なぜ。」
「僕はこの国で十分だ。この国を賭けてまで得る必要はないと思うからだ。」