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糸車 2

第3章 ゆびきり


僕が朝餉を食べている間、彼女が僕の寝具を片付ける。

せっせと働く彼女の小袖から覗く手首があまりにも細くて驚いた。

…でも、無理もないか。

10日前までは大坂城でひたすら僕の帰りを待ち続け、今は新たな戦に怯えているのだから。
食事をろくにしていないのだろう。

だったらなおさらだ。
絶対に秀吉を止める。

「全てが終わったら…君は何をしたいのかな?」

唐突に彼女に尋ねる。
たたんでいた着物から顔を上げ、彼女は首を傾げた。

「…全て、とは?」

「全部だ。
君を悩ませているもの、全部。
僕が、全部それを終わりにしてあげる。」

「半兵衛様…。」

「君の夢も、叶えようか。
だから、君の夢を教えてくれ。」

「私の夢…ですか。」

しばらく彼女はあれこれ考えていた。
たくさんあるのだろうか。
でも、それでもいい。
叶えてやりたい。

そして、彼女が僕の目を見た。

「半兵衛様。私の夢は…」

「うん。」

「半兵衛様と、これからも一緒にいることにございます。」

「………………………。」

僕と一緒にいること。

こんな当たり前のことを夢と語る。
そこまで彼女を不安にさせていた僕が悲しい。

「これからも、お側にいさせてください。」

「もちろん側にいるさ。
現に今だって側にいる、そうだろう?」

彼女が可愛らしく、ふふ、と微笑んだ。







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