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糸車 2

第3章 ゆびきり


「半兵衛様。」

「なんだい?」

す、と僕の眼前に差し出された小指。
意図がわからず、彼女を見つめた。

「ゆびきり、でございます。」

「ゆびきり……?」

「半兵衛様も、同盟を結ばれる時にこうなさるのでしょう?」

彼女が真面目な顔でそんなことをいうものだから、笑ってしまった。

「まさか。
ゆびきりはしないさ。
武人同士が約束するときは、署名なんだよ。」

「署名……。」

「そう。
僕が戦に出ている時、何度か君に文を書いただろう?
その文末に、僕の名前が書いてあったはずだ。
それが、署名。」

「では、ゆびきりは約束の証にならないのですか?」

「今ここで君と署名を交換しあうのも……うん。」

きゅ、と彼女の小指に僕の小指を結びつけた。

「僕らの証はこれだ。」

誰かと小指を絡めてゆびきりをするなんて何年ぶりだろう。
おそらく子供の時以来だ。
絡み合った小指を見て、彼女が無邪気に目を細める。

「ゆびきりげんまん、嘘ついたら、針千本飲ます。」

彼女が小さな声で歌う。
針千本なんて、恐ろしい。
そんな恐ろしいことしなくちゃならないなら、こんな幸せな約束破らないさ。



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