第3章 ゆびきり
彼女の甘い髪の香りが、僕を刺激した。
このままでは押し倒してしまいそうで、体を離す。
今が朝であることを憎んだ。
「じゃあ、続きは今夜にしようか?」
「……半兵衛さま!」
「冗談だよ…と言いたいところだけど、違うかもしれないね?」
彼女は顔を赤くしながら、ため息をつく。
「………というか、私は朝餉を持ってきたのでございました。」
「そうだね、いただこう。」
ようやく朝らしい雰囲気になる。
彼女がテキパキと準備していくのを眺めていると、また、咳が出た。
「……げほっ。
しつこいな、この咳は。」
「半兵衛様、やはりしばらくお休みになられてはどうですか?
まだ完治していないのかもしれないのですから…」
そうしたいのは山々だ。
ただ、秀吉を一刻も早く止めなくてはならない。
それから休んだって、きっと遅くない。
「心配してくれてありがとう。
でも、大丈夫だ。」
彼女も秀吉との件を察したのだろう。
しつこく迫ることは無かった。