第1章 シェアハウス
「ただいまー」
結局、仕事が終わったのは21時。家に着いたのはその30分後だった。
「あ、しょーちゃん。おかえり」
ソファーでひっくり返って本を読んでた雅紀が俺をちらりと見て言った。
「ただいま。ご飯食べた?」
「うん。スタッフさんと一緒に食べてきた」
俺の質問に悪びれることなく答える雅紀。
こんな歳になってからっていうのもあれだけど、俺は誕生日ケーキを買ってきていた。
「そっか、…」
少し残念そうに言う俺に天然な雅紀が気づくこともなく、ふわ、と眠そうにあくびをしている。
「しょーちゃん、俺もう寝ちゃうかも」
そう言ってゆっくり起き上がり寝室へ向かおうとする雅紀の手を思わず掴んだ。
「待って、雅紀。まさかお前」
俺がその言葉の続きをいうことはなく、隠し持っていたケーキの箱を見つけた雅紀は顔面蒼白という言葉がとってもよく似合う顔色で俺を見つめた。
「ごめん、ごめん!」