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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第35章 第一部 エピローグ/夕明かりの先へ


「ロヴィは、つようなったよ。……自分が思ってる以上に」

「俺は……強くなんか――」

アントーニョは再確認するように、どこか上の空で呟いた。

今にも泣きだしそうに顔を歪めるロヴィーノを、アントーニョはふわりと抱きしめる。

「……絶対、助けたる」

そう短く、アントーニョは告げた。

低い、確固たる意志を秘めた声だった。

ロヴィーノの瞳に、透明な雫がじわりと滲む。

ぎゅっとつむられた目の端から、その雫がひとすじ落ちた。

そういえば、こんなふうに兄が泣くのを見るのは、戻ってきてこれが初めてだな、とフェリシアーノは思った。

アントーニョが離れると、ロヴィーノはごしごしと乱暴に涙をぬぐう。

遠ざかる背中を、唇を噛んで見つめていた。

扉をあけ、アントーニョが振り向く。

「じゃ、あとはフェリちゃん頼むな」

「うん」

「……無茶すんじゃねーぞ」

「おう! まかしとき!」

いつもの調子でそう言って、扉がパタンと閉まった。

まるで、また明日普通に会えるような、そんな一日のおわりの挨拶のようだった。

でもふたりの間には、それでなんの過不足もなく、十分なのだ。

夕陽がまた少し沈み、室内の光量が減る。

心なしか、温度まで下がったように感じた。
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