第35章 第一部 エピローグ/夕明かりの先へ
「……兄ちゃん、かっこつけすぎ」
「な、なんだよ」
だしぬけな言葉だからか、それとも図星だからか。
うろたえたロヴィーノが口をとがらせる。
「みんながいたときのあれ。笑いすぎの涙じゃなくて、ホントに泣いてたでしょ」
「っ!」
「みんなは騙されてたみたいだけど、弟の俺は騙せないよ」
「で、でも、あぁでもしねえと――」
「うん。だからかっこつけすぎ。公子ちゃんがいるから?」
「ちっちちちげーよ!」
顔を赤くし激しく否定する兄に、フェリシアーノはくすくす笑った。
アントーニョの言った通りだ。
ロヴィーノは弟の反応に不服そうにしていたが、ふと真剣な表情に戻る。
「アントーニョがバカなことしようとしたら、とめろよ」
「うん、もちろん」
「……お前もだぞ。へんなことせず、じゃがいも野郎とかその兄貴をタテにしときゃいいんだ」
「……うん」
まわりくどい気遣いに、また微笑が口元にうかぶ。
これはさっきと同じ笑みだと、自分を騙す。
――だめ、俺が泣いてどうするんだ。
もう無視できなくなってしまった。
兄の瞳から、少しずつ光が失せているのを。
カウントダウンがもう、ゼロに迫っているのを。