第46章 “計画された犠牲”
そのとき。
一瞬、世界が音をなくした。
目を焼くような、真っ白な光が視界を埋め尽くす。
その白を、朱色の突風が弾けるように食い破った。
決して熱くはない、あたたかで、優しい火のような風。
それが靄を吹き飛ばして、
「間に合ったある……!」
声が、現れた。
その人物は、見間違えるはずもなく、
「あ、にき……?」
ヨンスが呆然と見つめる先で、“王耀”が、ふっとやわらかく微笑した。
トン、とわずかな音を立てて地面に降り立つと、耀はそのまま、なんでもないように操作盤へと歩きだした。
彼が操作盤にふれると、突然パアアッと世界が晴れ上がる。
さっきまでの大嵐が嘘のように、突き抜けるような美しい青空が広がっていく。
魔法のように、世界が、快晴に書き換えられていく。
「パスワードを認証」
そんな機械音声も、よく聞こえなかった。
操作盤のすぐそばに倒れていた、さっきまで靄だった“香くん”が、ゆっくりと体を起こす。
長い夢から覚めたように、ぱちぱちと目をしばたいている。
瞳からは濁りが消え、いつものように澄んでいた。
「まったく、お前らは本当にムチャばっかりあるね」
他愛ない小言を言うような口ぶりで、耀は香くんに肩を貸した。
抱き起こされる香くんは、なにがなんだかわかっていない顔だ。
「けど、よくやったある!」
ぱっと明かりを灯すような笑みは、突き抜けるような蒼天によく映えていて。
どこまでも優しくて、安心させるその笑顔に、頭のどこかで激しいサイレンが鳴り始めた。
どうしてここにいるの、とか、なぜパスワードを知っているの、とか。
――なんで、”透けてるの”、とか。