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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第27章 By the turning point


「……パーセンテージなんて、信用できないわね」

歌うように言葉を放つ彼女。

その唇が、きれいな弧を描いた。

「――っ!?」

マシューの眼前に彼女が迫っていた。

鼻と鼻がくっつきそうなくらい顔を近づけて、唇に人差し指を当てている。

不自然にひらいた真っ黒な目が、マシューを無遠慮に覗きこむ。

彼女の言葉を理解する間はなかった。

マシューは、自分の頭が痺れだしたのがわかった。

彼女を押しのけようにも、腕に力が入らない。

見えない手で押さえつけられているかのように、1ミリたりとも動かせない。

彼女の、井戸の底のような瞳孔から、目をそらすことができない。

「……あ……っ」

マシューの口から、喉がねじ切られたような声がやっと出た。

彼女は、優しげに微笑む。

「怖がらないで。あなたに、ちょっとした頼みごとがあるの」

金縛りにあっていた体が、先端から冷たくなっていくのをマシューは感じた。

やがて、彼女の目に囚われている双眸から急速に光が失われていく。

見開きわなわな震えていた瞼が、重く下りてくる。

こわばっていたマシューの腕が、だらりと垂れた。

彼女は口元の笑みを深める。

そして、立ちすくむマシューの携帯を手に取った。

ディスプレイが、新たなメールの受信を知らせている。

それを見て、彼女はますます愉快そうに笑った。

マシューに視線を戻して、彼女は囁く。

「ちょっとした手伝いを……ね」

虚空を見つめるマシューが、うなだれるように、ゆっくりと頷いた。
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