第27章 By the turning point
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廊下に突っ立っている人物が目当ての人物だとわかり、アルは呼びかけた。
「おーい、マシュー!」
駆け寄っていき、背中をバシッとたたく。
「まったく、いつまでも来ないから探しに来たんだぞ! まだこんなところにいたなんて、一体どうしたんだい?」
話しかけるが、反応はない。
俯いているため表情はわからなかった。
アルは不審に思って、マシューの顔を覗きこむ。
「具合でも悪いのかい?」
すると、マシューが顔を上げた。
そこには不自然なほどの無表情があった。
「どうかしたのかい?」
「ううん、なんでもないよ」
何事もなかったかのように、マシューはいつもの温和な笑顔をパッと浮かべた。
訝るアルに、マシューが尋ねる。
「制御室のパスワード覚えてる?」
「急になんだい? 覚えてるに決まってるじゃないか!」
「そう、ならいいんだ」
「それより早く会議場へ行こう、みんな待ってるんだぞ!」
「そうだね、アル……ごめんね」
「ん? いいんだぞ、きみの遅さには慣れっこだからね!」
意気揚々と歩き出すアル。
マシューは、携帯の電源をつけた。
「……ごめんね」
マシューの呟きが、アルに届くことはなかった。