第27章 By the turning point
「ボタンは見つかった?」
唐突なマシューの問いに、公子は戸惑った表情を見せる。
一拍おいて、返事をした。
「え……えぇ、見つかりました」
「嘘だね、まだ見つかってないはずだよ。だって僕が見つけたから」
柔らかい声で、けれどえぐるようなトーンでマシューは言い放った。
ポケットから銀色の小さな円を取りだし、#公子#に見せつける。
黙り込む公子。
その瞳には困惑でもなく、焦燥でもなく――薄い苛立ちが映っていた。
無表情なマシューはしばし沈黙を守っていたが、ふいにニコッと笑って、
「嘘。これコインだよ」
手にしていたものを、指で弾いて宙に放る。
戻ってきたコインを手のひらに乗せて、よく見えるように公子に差しだした。
それは紛れもなく、ただのコインだった。
「あとね、メールには『公子さんはもう帰った』ってあるんだ」
マシューは空いたもう片方の手で、携帯のディスプレイを#公子#に示した。
アルのメールの続きは、目の前にいる彼女の“帰還”を告げるものだった。
公子は無言を続けている。
答えるまで逃がさない笑みで、マシューはふわりと笑った。
「ねぇ、君はだれ?」