第3章 覚醒
「童虎」
「あのまま行かせる訳にもいかぬであろう。……儂らもこれ以上ここで時間を使うわけにもいかんからな。」
咎めるようなシオンの声に、童虎は視線をやることなく答えを返した。
「彼女をどうするつもりだ?」
「……わからん」
「はぁ?」
予想だにしない返答に思わず声をあげたシオンに、童虎はようやく視線をそちらにやるが、すぐに気まずそうに視線をそらす。
「わからん…… が、このまま放ってはおけまい。……とりあえず聖域の麓の村までつれていく」
「……ハァー、まあ、それが妥当だろうな」
そう言いながらナマエを背に背負いなおした童虎は、今度こそしっかりとシオンと目を合わせた。
その様子に何を言っても無駄かと悟ったシオンがため息を着きながらも賛同すれば、彼は満足そうに頷いた。
「さて!……聖域に帰還といくかのう」
「……まったく…」
現金なやつだと言外に皮肉を込めてみても、童虎には伝わらなかったらしい。
もともと、伝わるだろうとも思ってはいなかったが。
らしいといえば、らしいか…
普段の彼と近くなった雰囲気に、シオンは僅かに表情を弛めると、他の聖闘士達とともに先を行く童虎を追いかけるように走り出した。