第1章 平穏
「アローン、お前午後はどーすんだよ?」
「僕かい?僕は教会に絵の続きを描きに行こうと思ってるよ。」
「そっか、んじゃあ、午後は俺たち四人で遊ぶか!あ、そういえばハルモニア。お前アローンの絵が見たいって言ってたろ?一緒にいってきたらどうだ?」
いかにも名案だといった風に言うテンマに少し驚いた。アローンの傷で動揺したとはいえ、自分でさえ見てみたいと言ったことを忘れかけていたのに。
でも、とハルモニアは困ったように眉をよせた。
「お誘いは本当にありがたいのだけれど、今日の午後は町に用事があって行かないといけなくて……」
残念だと全身で表現するハルモニアにアローンは小さく吹き出した。
「っフフ、大丈夫ですよ。大体そこで絵を描きますから、暇なとき一緒に行きましょう?僕もハルモニアさんに絵をみてもらいたいな。」
「本当に?ありがとう!前に見せてもらったテンマの似顔絵すごく上手だったから、その絵楽しみにしてる。」
そう言えば彼も嬉しそうに笑って頷いてくれた。
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。皆また後でね」
絵の道具が入っているであろう袋を抱えながらそう言ってアローンが出ていくとすぐに椅子に座っていたテンマも立ち上がった
「んじゃ、俺たちも行くか」
「うん!」
「ちょっと、待ちなさいってば……っ」
言うなり家を駆け出したテンマとカロを追ってマリアも飛び出していってしまった。
「んもう!私も早く追いかけないと。じゃあハルモニア、行ってきます」
「くれぐれも怪我とかはしないようにね」
大丈夫ーと言いながら遠ざかるアンナをしばらく見送ってから、ハルモニアは扉を閉めて家のなかを振り返った。
視線の先には賑やかな食事の名残かお世辞にもきれいとは言えない惨状の机が。
「片付けに時間かかりそう……急がないと遅くなってしまいそう」
そうこぼしてから、ハルモニアは腕捲りと共に気合いを入れたのだった。