第3章 覚醒
「……童虎」
「!、あぁ、すまん」
状況を把握しようとシオンが童虎の名前を呼ぶと、彼は一瞬ハッとした様子を見せた後、シオンの方へ顔だけ向けて小さく謝罪を口にした。
恐らくは、シオンらを置いていったことに対しての謝罪だろうと受け取ったシオンは、それに軽い頷きを返してから童虎によっていまだ支えられたままの女性を見やった。
恐らく先ほど童虎が口走った名前の持ち主だろう。
シオンと目があうと、呆然とした様子であった彼女は意識を取り戻したように慌てて口を開いた。
「あ、……!あの、え?童虎……さん?」
「うむ」
「な、なんでここに……?」
「……ちと所用があって…な……」
言いにくそうに口ごもった童虎に不思議そうに首をかしげながらも、彼女はそれ以上聞くことはしなかった。
……それにしても、いつまで二人はその状態でいるつもりなのか。
一人会話においていかれる形となったシオンは呆れがちに眉をひそめる。
このままでは埒があかないと踏んだシオンは、いいかげんにしろという意味も含めて小さく咳払いをした。
コホンと突然聞こえてきた音にハルモニアと童虎がそちらを見やると、そこにいたのは呆れたように眉をひそめたシオンだった。
「一体いつまでそうしているつもりだ?」
そう放たれた言葉にハルモニアは一度は首を傾げたものの、すぐにその意味を理解した。
自分は転びそうになって誰かに支えられたはずだ。
支えてくれたのは目の前にいる彼で……
混乱していて気づかなかったが、よくよく見てみると今も……
そこまで考えた瞬間に、ハルモニアは慌てて離れようとした。
……離れようとした、が、意外にも体に回されていた彼の腕に力が入っていたのか、離れることが出来ない。
「……あの、もう大丈夫です……から」
「!!……む、すまん…」
現状を理解しきれないながらも、取り合えずもう自分で立てることを伝えれば、童虎もハッとしたように腕から力を抜いた。
そのお陰か、今度はあっさり離れることができた。
「…あの、助けて頂いてありがとうございました」
「うむ……おヌシはどうしてここに?村にはおらんかったのか?」
そこまで問われ、ハルモニアは本来の目的を思い出した。