第3章 覚醒
冥王復活の報せをうけ、聖域からの特命でやって来たテンマの故郷は無惨にも破壊され、紅い炎に包まれていた。
あげくの果てに、復活した冥王はアローンであった。
童虎の視線の先にはアローンによって倒されたテンマ倒れ伏している。
あの時……二年前、テンマの友人という彼に感じたものはコレだったのかと今更ながらに納得することとなった童虎は歯を噛み締めながら、アローンの背中を睨み付けた。
「お主……なぜ親友であるはずのテンマを殺した!?」
答えよ!と怒鳴る声に振り返ったアローンは血の涙を流しながら言い切った。
死は救いだからだ……と。
それを聞いた童虎は、もはや目の前の青年はアローンではないのだと確信した。
あの純粋な少年アローンはもういないのだと。
そうであるならば、童虎のなかに生まれる感情は一つだけであった。
「テンマの敵……討たせてもらう!!!!」
童虎は叫びと共に拳を握りこむと、立ち去ろうとするアローンの背にむかって駆け出した。
しかし
小宇宙をこめた拳を振るった瞬間、それは突如として何かによって阻まれた。
もうもうと立ち込める土煙の中からあらわれたのは一人の冥闘士であった。
天暴星ベヌウの輝火と名乗るその人物は、ハーデスを守るようにして童虎の行く手を塞ぐ。
童虎が放った技も、その人物の技によって相殺されてしまった。
(この小宇宙っ……黄金聖闘士に匹敵するというのか…!)
「フン……」
口元を流れる血を拭いながら不敵に笑う冥闘士を見据える童虎の表情は険しい。
しかし、ここで引き下がるわけにもいかないと再び技を放とうとした童虎は、シオンによってとめられた。
思わぬ仲裁に、童虎は声を荒げる。
「なぜとめる!シオン!!」
「落ち着け、童虎」
「ペガサスもユニコーンもやられたのだぞ!!」
「っ、落ち着け!気持ちはわかる……わかるが…我々にはまだやるべき事があるだろう」
目前の冥王軍を見据えながらも、そう諭された童虎は一度だけ冥王軍へと視線やってから、撤退を選んだ。
背を向けて走り出した黄金聖闘士を追おうとした輝火だが、それはハーデスによってとめられた。
――聖戦はまだ、始まったばかりなのだから――
彼らの背後ではまさにその始まりを告げるかのように、巨大な城がその全貌をあらわしつつあった。