第3章 覚醒
徐々に周囲の風景が見慣れたものに変わっていく。
もうそろそろ村が見えてくるだろうという辺りまで来た時のことだった。
大地の下からだろうか……低く響いてくる轟音と共に足元が大きく、小刻みに揺れだした。
(!……な、なに!?)
転ばないようにと足に力を入れても、大地の揺れに逆らうことは出来ず結局倒れ込んでまった。
その瞬間ハルモニアの目が異様な光景を捉える。
歪な形をした塔のような建造物が空に向かって伸びてゆく光景を。
明らかな異常事態に得体の知れない恐怖が沸き上がるが、その塔が出現した方角がまさに自分が目指していた方であると気付いた瞬間、一刻も早くその場に行かなければならないという衝動が爆発した。
「皆……、アローン!!」
無意識に吐き出された叫びと同時にナマエは弾けるように立ち上がった。
揺れに度々足をとられながらも少しずつ前へと歩きだす。しばらくして揺れはおさまったが、それに構うことなく歩き続けるハルモニアの足は、次第に走り出していた。
およそ起こり得ない光景にうまく整理のつかない中で、ただ彼らの無事を確認したい一心で走っているようなものだ。
近くなったといっても、まだ大分村までは距離がある。
息が弾み、呼吸が苦しくなっても足は止まらなかった。
……そうはいっても、心と体は別物だ。只でさえ疲労の蓄積されたハルモニアの足は上がりきらずに容易に小さな段差にも引っかかる。
案の定、地面に覗いた石に躓いてしまった。
ゆっくりと傾いていく光景の中で、転ぶ、とナマエが目を固く閉じた瞬間ハルモニアの体は誰かに支えられていた。