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それでも世界は美しい

第3章 覚醒


森の大聖堂。
その固く閉ざされた門の前に、二つの人影があった。



「首尾はどうだ?………パンドラよ」
「は。ハーデス様のお力も増しておりますゆえ、……そろそろかと…」

ひざまずくパンドラにの言葉に、わずかに口角をあげたヒュプノスは背後の大聖堂を見上げる。

「器の少年の心が絶望に染まった時……ハーデス様が覚醒される」
「……心得ております………」
「明日だ」
「は………?」

突然放たれた言葉の意味をとらえあぐねたパンドラが思わず顔をあげて目の前に立つヒュプノスを見上げれば、視線の先の彼は笑みを濃くする。

「明日……、お前は器の少年をこの大聖堂へと連れてくるのだ。少年の願いを叶えてやろうではないか」
「……ぬかりなく」

意図を理解したパンドラが再び頭を下げつつそう返答すると、ヒュプノスは何を言うこともなくその場を去った。

顔をあげてヒュプノスがいなくなったことを確認して抜けた体の力に、自分が緊張していたことを改めて実感したパンドラは、そのままホッと息をついた。

双子神を前にするとどうあっても畏縮してしまう。
特にタナトスを前にするとだ。タナトスに対面すると、心の奥底から恐怖が沸き起こってくるような心地がしてしまう。それがなぜかは、パンドラ自身にも分からないでいた。

胸元の手に力を込めて一度固く目を閉じたパンドラはゆっくりと瞼をあげて空を見上げた。

(ハーデス様……明日、あなた様が………)

彼女の視線の先ではただ月だけが蒼白く輝いていた。









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