第3章 覚醒
テンマ達を見送って中にはいると皆寂しさを堪えた顔をしていた。
駆け寄ってきたカロを抱き寄せると、堰を切ったように泣き出した。それにつられて、アンナとマリアも泣き出してしまう。
仕方なくハルモニアは三人を寝室に連れていってベッドに腰かけると、すがり付くようにして泣く三人の頭をゆっくりと撫でて行く。
暫くそうしていると、皆少し落ち着いてきたようだった。
「……ハルモニア。マリアと、カロをつれて丘の方まで出掛けてくるから……ハルモニアはアローンを見てあげて?」
そう小さく言われた言葉には驚いてアンナを見れば、マリアもそれに同意したようだった。
「きっと、今回のことで一番辛いのはアローンだから………今アローンが頼れるのはハルモニアだけだと思うの………」
そう言ってうつむいたアンナに了承の意を伝えると、彼女はマリアと共に未だに目を擦るカロを連れて寝室を出ていってしまった。
それと入れ替わるようにして寝室へと入ってきたのは、アローンだ。
泣きはしていないものの、沈んだ表情は隠しきれていない様子だ。
彼はゆっくりと歩いてくると、ポスリとハルモニア
の隣に腰を下ろした。
「テンマが………行っちゃった。」
そう言って再び口を閉ざしたアローンに掛ける言葉が見当たらない。何かを堪えるように一点を見つめるアローンの横顔を見ていると、ふとあの銀色のアクセサリーが思い出された。思わず、あ、と出た声に反応してアローンがこちらを向く。
「どうしたの?」
「……これ。本当は朝渡したかったんだけれど……」
遅くなってごめんなさい、と謝罪と共にソレを差し出せば、アローンは驚いたような表情をして受け取った。
「……きれいに直ってる……ありがとう、ハルモニア」
そう言って微笑むアローンはそれを首にかけた。
「ハルモニア、僕ね。テンマが立派な聖闘士になって帰ってくるまでに、絵がもっとうまくなるように練習するよ……テンマが立派な聖闘士になるのなら、僕は立派な画家になって見せるよ……だから、さ」
「なに?」
「だから、さ、ハルモニアは……何処にも行かないよね……?」
今日はじめてあった目はどこか縋る様な気色をはらんでいて、それにハルモニアはただ黙って頷くことしか出来なかった