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それでも世界は美しい

第2章 胎動


最後にアローンをベッドへ横にした時、アローンが少し目を開けた。

「ごめん、起こしちゃった?テンマのことをありがとう」
「全然大丈夫……」

そう言って笑うアローンは凄く眠そうだ。おやすみ、と言って離れようとすると弱い力で服を引っ張られた。

「どうしたの?」
「…これ……」

そう言って差し出されたての中には、銀色に鈍く光るアクセサリーがあった。こんなものをアローンは持っていただろうかと首をかしげたが、すぐに着けていなかっただけかもしれないと思い直す。

「…チェーンが切れちゃったんだ…直してくれる?」
「いいよ、わかった。朝までには直しておくから、アローンはゆっくり休んで?」
「ありがとう。ハルモニアも、無理しないで」

そう言って夢の世界へ旅立ったアローンの頭を一撫でしてハルモニアが食堂に出たとき、孤児院の扉を開けてさっきの青年が入ってきた。




「それで……お話って何でしょうか…?」

管理人室の机に向かい合うようにして座ったハルモニアはそう切り出した。

「うむ………その事なんじゃかのう、実は、テンマを引き取りたいのじゃ」

少し言いずらそうにしたのも一瞬で、次の瞬間には覚悟を決めたように真剣な眼差しでそう言いきった青年に、ハルモニアはやはりか、と顔を伏せた。

「いきなりですまんが…。儂は童虎と申す者。聖域でアテナの聖闘士をしておる事は、道中話したじゃろう?」
「…はい。小宇宙の事も、それがテンマにもあるということも。……でもそれが!…どうしてテンマを引き取るなどというお話になるのでしょうか……?」

思わず声が大きくなってしまい、あわてて小さくしたハルモニアは沈痛な声で疑問を口にする。

「……アテナの、聖闘士になってもらいたいのじゃ。詳しく教えることは機密事項も多い故にできんが……これだけは約束しよう。この儂が、責任をもって彼を立派な聖闘士にする、と。」

目を真っ直ぐ見つめながら放たれた言葉には、重い覚悟のようなものが滲んでおり、決して上部だけの口約束ではないと分かる。
そうはいっても、結局それはテンマを戦地へ送り出すのと変わらない事も理解していたハルモニアはただ言葉を詰まらせるしかなかった。

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