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それでも世界は美しい

第2章 胎動


気配の先にいたのはテンマではなく黄金の鎧を纏った男性であったことに驚き、足を止めかけたものの直後にテンマの雄叫びにも似た声が聞こえてきたことから、その先に彼がいることを確信したハルモニアは再び足を運ぶ

崖っぷちに立つ黄金の男性が一瞬こちらを見た気がしたが今はそれどころではない

崖っぷちまで駆け寄った時、下で大岩が砕ける光景が広がった。その下にはテンマの姿があり、力なく倒れこもうとする彼に大量の水が襲いかかろうとしていた

「テンマァ!!!!」

顔を蒼くさせそう叫んだハルモニアの視界の横で、黄金が飛び降りていった





「テンマァ!!!!」
と叫ぶ声を聞きながら崖から飛び降りた童虎は、素早く倒れこむテンマを抱えた

「っ、おい!」
「……ん、」

童虎の呼び掛けにうっすらと目を開けたテンマは朦朧とする意識の中で、自分は皆を守れたのか、と童虎に問いかける

「ああ」

そう返ってきた心強い声と言葉に安心したように再び瞼を下ろしたテンマをギュッと抱え込んだ童虎は、ちらりと自分達を襲おうとする濁流を見やると足に力を入れて飛び出した



崖の上に少年とともに舞い戻った童虎を未だ蒼白の顔色でポカンと見つめる女性に近づくと、彼女はハッとしたように小さく声をもらした

「テンマと言うのか?少年は無事じゃ」

ホレ、と腕の中の少年を見せると、彼女は安心したようにベシャリと地面に座り込んでしまった
安心したとたんに涙が出てきたのか、小さく嗚咽を漏らす女性は、所々えずきながらも童虎に礼を言った

どうしたものか、と頬をかいた童虎はテンマを木の下に寄りかからせると、未だうずくまる女性に近寄って、自らの聖衣のマントを破りとると彼女の肩にかけた

童虎の小宇宙に守られ今まで乾いていたマントも、直ぐに濡れてしまったが、ないよりはましだろう

「いつまでもそのような濡れた格好でおったら風邪をひくじゃろうが……。」
「!ありがとう…ございます……」

そう言ってようやく立ち上がった彼女を、少しでも雨をしのげる木の下へと誘導した童虎は、心配そうに少年の様子を見る彼女に質問を投げ掛けた

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