第2章 胎動
「!アローンには熱があるんだから…」
「俺がいく!」
ハルモニアの言葉を遮って言ったのはテンマであった
「俺が必ず、お前らを守ってやる!!」
「ちょっと、待って!テンマ!!!」
言うや否や外に飛び出していってしまったテンマを追って、ハルモニアも飛び出していってしまった
アローンは追いかけたい衝動にも駆られたが、こちらを不安そうに見つめるカロに気づいてそれを堪える
「…大丈夫。テンマならきっと僕たちを守ってくれる…だから、僕らは二人が無事でいられるようにお願いしよう?」
そう言って手を合わせて目をつむったアローンにならって、四人は小さくかたまって目をつむった
そのころ、テンマを追って飛び出していってはいいものの、足の速い彼にどんどんと差をつけられ、遂には見失ってしまったハルモニアは、森の中で立ち往生していた
林の中であるから、当然道などなくテンマがどこへ行ったのか知る術はない。ただ、町へ向かったのでは無いことだけは確かだった
(本当に…何処に……!?)
いよいよ焦り始めたとき、ふと、テンマの声が聞こえた気がして辺りを見渡す
ぼんやりとテンマの気配のようなものを感じたハルモニアは、その不思議な感覚に支配されたように、そちらに向かって走り出した
突如森で感じた小宇宙の元へたどり着いた童虎が見たのは、川の流れをふさぐ大岩を砕かんと拳を振るう少年の姿であった
無理だ、と思い少年を助けようと童虎が身をわずかに乗り出した瞬間、少年の小宇宙が大きく膨れ上がった
それに驚いた童虎は、ふと後ろから小さな小宇宙が近づいてくることに気付き軽く振り替える
びしょ濡れの女性が駆け寄ってくる姿を捉えて、彼はかすかに眉をひそめた。その姿にではなくその小宇宙に対して、だ
女性の小宇宙は一般人並みの極々小さなものであったが、その質が少しアテナのものに似ているように思われたからである
しかし、いぶかしんだのは一瞬で、すぐに視線を下の少年に戻せば、膨れ上がった少年の小宇宙が彼の拳にのって大岩を砕いた
そのまま力が抜けるように倒れこんだ少年を呑み込まんと大量の水が岩の破片とともに彼に降りかかろうとしているのを確認した童虎は、マズイ、と彼を助けるために飛び出した