• テキストサイズ

それでも世界は美しい

第2章 胎動


「ひどい天気………」
もう何度目か分からない雷鳴の音を聞きながら何気なく呟くと、隣にいたパメラとトニーノもため息をもらした
「困ったね……これだけ酷いと客も来やしない」
「まったくだな。今日はこれ以上やっても意味ないだろう」
「あんたはどうする?なんだったら泊まっておいきよ」
外を見ながらそう提案してくれたパメラにハルモニアは首をふった

「お話はありがたいですけど…皆が心配なので」
「帰るのかい?」
「はい」
帰るという言葉驚くパメラだが、みるみる呆れ顔になった
ちょっと待ってなとだけ言って奥へ姿を消した彼女を疑問に思いつつ首を傾げていたハルモニアに、再び戻ってきた彼女は布に包まれた何かを手渡した

「?…これは?」
「選別さ。少ししかやれなくてすまないね。どうせ今日使わなかったら傷んじまうやつだから、遠慮はいらないよ」
「……ありがとうございます!じゃあ、私行きますね」

パメラらの善意に甘えることにしたハルモニアは二人に頭を下げてから店を後にした




町の門を出ると道は石畳から土へと変わり、とたんに走りにくくなる。道がぬかるみ思い通りに走れない事に加えて、激しすぎる雨のおかげで、雨避けにと被った布はもはや気休めにもなりはしない。
濡れてまとわりつく衣服にうんざりしながらも、ハルモニアは一心に走り続けた



「……ただいま」
ようやくたどり着いた孤児院の扉を開けると、誰もいない部屋に首を傾げる。
何時もであれば皆起きていて騒がしいはずの食堂は彼らが寝静まった後のようにガランとしている
不思議に思ったが、ふと奥の寝室へ続く扉から光が漏れている事に気づく

もしかしてもう寝ているのだろうかとそっと屋内へ足を踏み入れた彼女は、べチャリと水音が響いたことで自身がずぶ濡れ状態であることに気がつく
着替えるのが先決かと隣の小部屋へ向かおうと向きを変えた瞬間、寝室の扉が開かれてテンマが顔を出した

「ハルモニア!帰ってきたんだな。……あれ、アンナ達は一緒じゃねぇのか?」
「え、どういうこと?」
「会ってねぇのか?」

そう言って首を傾げるテンマは次の瞬間ハルモニアの手をつかんだ

「ま、いいや!とりあえずこっち来てくれ。アローンが倒れたんだ」

半ば無理やり引きずり込まれた寝室では、一つのベッドの上でアローンが苦しそうに横たわっていた

/ 45ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp