第1章 ~PROLOGUE~
千鶴side
あんなに、怒鳴りつける雅紀を、見たのは、何年ぶりだろうか。
確か、私も雅紀も、まだまだ小さかった頃…
昔、近所の大きい男の子達5人に、からかわれて、私が泣いていた時だった。
雅紀は、たまたま、道場帰りに泣いている私に気づいて血相を抱えて走り寄って来る。
雅紀「ちっ、千鶴おねぇちゃん?どうしたの?どこか、痛いの?」
慌てて私の体を見る雅紀。
私は、雅紀を抱きしめゆっくりと、首を振る。
しばらく、沈黙が続いたが、雅紀は周りに居る自分より、一回りほど大きな男の子達を見渡すと何時もの表情はどこへ行ったのか、雅紀は目を細めて、相手を睨んだ。
雅紀「…てめぇーらか、千鶴おねぇちゃんを泣かせたのは」
声も、とても低く男の子達も一瞬唾を飲み込み冷や汗をたらした。
男の子1「ふっ、ふん。それがなんだよ」
男の子 2「そうそう。こいつが、悪いんだよ。弱い癖して何時も師匠と一緒に居るしさ」
男の子3「女だからって、生意気なんだよ。」
そう。
この人達は、雅紀の行っている道場の先輩なのだ。
最近、千鶴がお弁当などを雅紀に持って行っているので、師匠にも、可愛がられていたのだ。
それを、嫉妬した男の子達は、隠れて前々から、イタズラや嫌がらせをしていたのだ。
雅紀「そんなの、ただの嫉妬だろうが。別に女が弱いのは、当たり前だ! それに、弱い女を守るのが、男の役目って師匠も言ってただろうが!」
男の子 2「うっせー! しかも、てめぇーも、道場で下っ端の癖に生意気なんだよ!!」
雅紀「なんだとー!」
雅紀は、持っていた竹刀を構えて相手に、突っ込んで行った。
しかし、体格が全然違ううえ、人数も5対1で当然こっちが不利な状況だった。
そこへ、たまたま通りかかった師匠と、帰りが遅く心配して出てきた綱道が急いで、止めに入ったのは、言うまでもない。
雅紀は、傷だらけでとても痛々しく、それは、相手も同じだった。
………そうだ。
いつもは、大人しい雅紀が声を上げたせいな
のか、たしか、あの日止めに入った瞬間、雅紀が倒れたんだ。
ってことは…
ーバタ
私は、物音のおかげで、ハッっと、我に返った。
前を歩いていたはずの、雅紀は冷たい床に倒れている。
千鶴「なっ、雅紀!!」