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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第36章 紅



「調子に乗るのも……っ、いい加減にしろよ!!!」

「鬼の姿を取れば、僕に勝てるとでも? 慢心は……よくないねっ」

「総司様、大きく後退を!!」


 沖田は逆らうことなく、志摩子の指示通り大きく飛び退いた。同時に、自分が今いた場所に大きく刃が通った。力押しで、瞬時に軌道を変え沖田を狙った攻撃だったのだろう。しかしそれさえも、志摩子の力の前では全てお見通しだった。


「姉様っ、どうしてボクの邪魔をするのですか!? 鬼は古来より忌み嫌われ、ボク達はずっと苦しい世界を余儀なくされてきたというのに!!」

「だからと言って、平穏に暮らす人々の生活を侵してもいい理由にはなりません! もうこんなことはおやめなさいっ、天!」

「ボクは……ボクは姉様の護身鬼になるのに、どれだけの苦痛を伴ったか。姉様にわかるの!?」

「……っ」


 天は自らの胸元の着物をぎゅっと握り、志摩子を狂った瞳で見つめながら泣き叫ぶように言い放つ。


「護身鬼になった鬼は、その契約鬼の身に危険が迫ると激しい頭痛を伴う。痛みを代償に、ボク達は姉様の居場所を見つけ出すことが出来る。けれどね、その痛みがどれほどのものか……姉様があの家を出てから、この頻繁に起こる痛みにボクがどれだけ辛かったことか!!」

「……天……っ」

「もう痛いのは嫌だ、もう痛いのは嫌だ!! だから姉様にどんな危険を及ばないところにボクが閉じ込めて永遠に守ってあげるんだ!!!」

「貴方に、そのようなことが……っ」

「同情はいらないよ、姉様。ボクがほしいのは、姉様自身だ」

「私は……」


 志摩子が言葉を紡ぐより先に、沖田が鬱陶しそうに天へと斬りかかっていく。天もまた、不愉快そうに沖田の攻撃を薙刀で受けた。

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