第33章 心
「何が一番よかったかなんて、結局はその時になってみないとわからないじゃない? 何が正しいかなんて、きっとだぁれもわかんないわ。その中で自分が後悔しない道を選ぶしかないんじゃないかしらね」
「……そう、ですね」
「アタシだってそうよ。こんな商売ばっかしてるとね、たまに危険な目に遭うこともあるわ。その時にふと、アタシのしてることって間違ってるのかって思う時もある。だけどね、たぶんその瞬間のアタシにはそれしか出来なくて、それしか選べないんだと思うの」
「……」
「アンタは、彼らの元を離れることしか選べなかったんじゃないかしら」
彼の言葉に、志摩子は顔を上げランドンへと視線を向けた。確かにそうだと、心の中で何度も頷きながら。
只でさえ、戦で次々と隊士達が死んでいく中、志摩子の存在が彼らに鬼との戦闘までさせる結果となった。そのせいで、更に沢山の隊士達が死んだ。選ぶしかなかった、土方が出した案を飲飲むほかなかった。あのまま志摩子が留まり続けたところで、次に鬼が仕掛けてきた時無事でいられるだろうか?
ならばいっそ……自分は遠く離れて、彼らの無事を祈るしかないと。
「私のせいで、沢山の隊士が命を落としました」
「自分を……責めているのね」
「そうなのかも、しれません。私がいなければと、思いました。でも私の存在に救われているのだと、彼らはそう言って下さいました。そんな彼らに、私は今も恩を返すことが出来ずにいます。どうして……私は無力なのでしょうか」
ランドンはそっと志摩子の肩を抱くと、そのまま自分の方へと抱き寄せた。まるで宥めるように。慰めるように。