第33章 心
「ねぇ、志摩子ちゃん。アンタ、欲しいものとかないわけ?」
「欲しいものですか? あ、いえ……特には」
「遠慮しなくてもいいのよ! アタシが揃えてあげるからっ」
「え!? い、いえ! とんでもないですっ。服も……買って頂いたというのに」
「ん――……アンタってほんと物欲がないわね。女ならもっとお洒落しないとね!」
ランドンは志摩子の手を掴むと、まだまだこれからと言わんばかりに彼女を連れまわす。やがて買い物に疲れ果てた志摩子を連れて、小さな茶屋へと入るのだった。
「はぁ、これだけ買うと流石に疲れちゃうわね」
「買い過ぎではありませんか? 山崎様がびっくりされてしまいそうです……」
「あの子の分の服も買ったせいだわ! あーあ、これなら荷物持ちに山崎ちゃんも連れてくるべきだったわね」
「え、勘弁して差し上げて下さい……」
「あははっ、冗談よ冗談」
「らん様は元気ですね」
「アンタは若いくせに体力ないわね。あれでしょ? アンタ家では箱入り娘だったんじゃない? 今時いるのね、そういうお嬢様」
ランドンは頼んだお団子を取ると、一口食べ始めた。志摩子もみたらし団子に手を伸ばし、食べ始める。