第33章 心
「時代は大きく変わろうとしているわ。新選組の子達も、引きどころを考えた方がいいと思うのよね。そうアタシは思うわ」
「彼らが負けると! そう仰るのですか!!?」
「志摩子ちゃん、彼らの肩を持ちたい気持ちもわかるけどこれが現実よ。つい今朝入った新しい情報によると、旧幕府軍のお偉いさんが尻尾撒いて江戸まで逃げたらしいじゃない。兵士達を置いてよ? 馬鹿じゃなければ、彼らも江戸へと軍を引くことになるでしょうね」
「……っ」
「援軍を呼ぼうってたって、今の旧幕府に肩入れするような頭の悪い連中はいないと思うわよ。アタシは一応新政府軍に武器を売っている側だからね、少なくともアンタ達が新政府軍に殺されることは今のとこないだろうから安心しなさい」
ランドンが視線を向けた先の志摩子は、ぐっと拳を握りしめ何かを耐えるように俯き続けていた。無理もない。自分達が安全な場所を求め、逃げている最中戦況は大きく動いていたのだから。山崎もなんとも言えない顔で、眉間に皺を寄せていた。
「手紙の通り、アタシはアンタ達を無事保護するし何かあった時は守ってあげる。でもね、もしも新選組にいずれ戻るつもりであれば……死を覚悟なさい。アタシが殺すって意味じゃないわよ? 生きたかったら、もう彼らのことは忘れなさい」
ランドンの言葉に、二人は返す言葉もなかった。今の戦況を聞かされ、流石の二人でもどれだけ今新選組が身を置く旧幕府軍に、勝ち目がないか……。
志摩子は震え始める唇を必死に動かして、口を開いた。