第33章 心
「改めて、アタシはランドン。西洋の方からこの日本にやってきて、今は武器商人をしながら生計を立ててるわ。でも本業はどちらかといえば、情報屋ね。このご時世だもの! 特に戦や戦況、旧幕府軍と新政府軍の内部情報は高く売れるし、喉から手が出るほど欲しいやつなんて腐るほどいる。まぁ、そんなこんなで商売しながらこの港町に住んでるってわけ」
「そうだったのですね……なんというか、凄いですね」
「アンタ立ちからすれば、何もかもが物珍しいでしょうね。でもうちではこれが普通! うふふっ、志摩子ちゃんは顔もいいしスタイルも良さそうだし、何着ても似合いそうね」
「す、すたいる……?」
「体型のことよ」
くすくすと笑うランドンに、からかわれているような気分になりながら、志摩子は苦笑いを浮かべた。穏やかな談笑を続けたかと思いきや、ランドンは「此処からが本題」と表情を変えた。
「次に、旧幕府軍と新政府軍のことよね。単刀直入に言っちゃうと、旧幕府軍では到底新政府軍には敵わないでしょうね」
「それは、どういう意味だろうか……」
「新政府軍は、アタシ達西洋から新型の武器や弾薬を買っているわ。今日も丁度、荷降ろしの手伝いをしてきたところ。いくら新選組が強かろうと、刀じゃもう戦なんて出来やしないわよ。刀の時代は終わったわ」
「……そんなっ」
志摩子が悲痛な表情を浮かべ、俯く中ランドンは小さく溜息をつきながらも言葉を続けた。志摩子達にとっては、勿論信じたくない事実だ。だがこれが今の世の、変化の波なのかもしれない。