第33章 心
「……山崎ちゃん、この子が例の子ね?」
「はい、そうです」
「初めまして。アタシはランドン、西洋人なんだけど聞き慣れない言葉ばっかりで混乱しちゃうわよね? ランでいいわよ、気軽に呼んで頂戴っ」
「らん様……ですね? えっと、志摩子と申します。あの、その、お一つ尋ねても宜しいでしょうか?」
「別に構わないわよ」
「……らん様は、女性ですか?」
「お・と・こ、よ」
「……!!!」
志摩子がぎょっと目を見開いたことで、ランドンは可笑しそうにけたけたと笑った。
「あんた面白い子ね! 初対面でいきなりそんな事聞いてきた子は初めてよっ。ささ、長旅で疲れたでしょう? アタシの家に案内してあげるわ。いらっしゃい」
ランドンに案内されるがまま、二人は彼の家へと招かれる。見慣れない雰囲気の家に、志摩子はただ戸惑うばかりだった。ランドンの服装も、着物ではなかったため本当に異国の人なのだと実感させられる。
中へ入った志摩子達は、早速椅子に腰かけてランドンと向かい合った。
「らんさん、いきなりの文で申し訳なかった。事情が事情だったため、他に頼れる宛てがなかった」
「んもうっ、そんなこと全然気にしなくていいのよ! 可愛い女の子なら、尚更大歓迎よ。それより、あんた達はもうこの戦に関する情報は今どこまで把握しているのかしら?」
「申し訳ないが、逃げ延びるのに精一杯で何も知らないのです」
「ふんふん、なるほどね。じゃあとりあえず、志摩子ちゃんにはアタシのことから話した方が良さそうね」
ランドンはにっこりと微笑んで、志摩子へと向き直った。