第26章 命
「そんなの、新選組が見過ごすわけないでしょ。新選組にとって、志摩子ちゃんは仲間なんだ。絶対……渡したりしない、傷付けさせもしない。僕が、そんなこと許しはしない」
「総司様! 安静に……っ」
「僕の命が尽きるその瞬間まで、僕は彼女を守ってみせる」
沖田の表情には迷いがなく、それを知った風間はふっと笑みを浮かべるのだった。今の彼に何が出来るのだろう。病のせいで、上手く身体を動かすことも出来ず腹に受けた傷も、早く手当しなければいけないほどの深手だ。
ボロボロの身体で、何をほざくのかと。風間はそんな思いで嘲笑した。
「ならば守ってみせろ、お前達の手で。新選組の手で……志摩子を。俺はそれを見届けよう。もしも果たされない時が来たならば……俺が容赦なく志摩子を、浚う」
強い風が吹く。共に風間の姿は消え去った。
「総司様! なんて無茶を……っ」
「あれ、もしかして泣いてる?」
涙で滲み始めている志摩子を知って、沖田は微笑んだ。そっと志摩子の頬に触れて、流れる涙を拭おうとするが……途端に手を止めた。
ぐっと唇を噛んで、沖田は手を下げる。
「ごめん。泣かされるために、君を連れ出したわけじゃないのに」
「……私を守ろうと、無茶をなさったのですね……。どうして、そんな無茶を」
「僕は同じことを二回いうのは、嫌いなんだけどな」
沖田は志摩子の手を取ると、その指先に口付ける。