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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第26章 命



「千景様……」

「早くその男を手当てしてやるといい。俺の用も済んだ」

「千景様は、何をなさりに此処に来たのですか!?」

「……雪村の女鬼を引き取りにきた。だが、手荒く拒絶された。いずれ都に戦渦に巻き込まれていくだろう。そうなれば、お前もこのままとは行くまい。今……俺と共に来るか?」

「……申し訳、ありません」


 志摩子は風間から顔を隠すように、俯いた。


「何故だ? 俺が迎えにわざわざ裏庭まで足を運んでやったというのに」

「……ご冗談を」


 少しだけ自嘲気味に志摩子は笑い、苦笑いにも似た酷く表情を崩した顔でもう一度風間を見上げた。

 迎えに来た、その言葉に何故だか志摩子の心は嬉しいとも思わなかったし安心もしなかった。その理由を既に彼女は持っていた。あの頃とは、違う感情を。


「私は、新選組と共に在りたい。そう思うのです」

「貧弱な人間に何が出来る? お前一人、守れもしないというのにか」


 風間の視線の先には、傷付き倒れている沖田の姿。

 それでも志摩子は、言葉を続けた。


「彼らと時を生き、様々なものに触れ気付かされたことが沢山あります。そして千景様が私に以前仰られたこと。自分で選択し、選ぶ力。少しだけ……わかった気がします」

「ほぉ? 申してみよ」

「私は新選組の皆様が好きです。温かくも逞しく、強く己を持ち生きる姿は憧れもします。私も彼らのように、強く生きていけるようになりたい。彼らとなら……それが果たせる気がするのです」

「お前を狙い、蓮水の家の者が襲いに来ようともか?」

「それは……」


 不意に、沖田の手が志摩子の手を握る。驚いた志摩子が、沖田へと顔を向けた。

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