第26章 命
「……! へぇ、人間でもボクに傷を負わせることが出来る奴がいるんだ。面白いじゃん……っ!!」
愉快そうに笑ったかと思えば、みるみるうちに天の姿が変わっていく。髪は銀髪に、瞳は金色に染まり始める。そして頭に……二本の角。
「本当に鬼なんだねっ、君は……ッ」
「そうだよ! 驚いた? 本番はこれから……ッ!!」
「ぐ……っ」
一気に放たれた薙刀は、先程とは比べようのない力を発揮し、沖田に膝をつかせる。
「……ッ」
その瞬間、沖田は急に顔色を変え酷い咳と共に、大量の血を吐き出した。
「!! 総司様……っ!」
志摩子は沖田へと駆け寄ろうとする、だが……それを沖田の腕が制した。
「こっちに来ないでくれるかな、志摩子ちゃん。君を……守れなくなっちゃうでしょ」
「総司様!? そんな身体で……何を仰っているのです!」
「僕だけが、こいつらの気配をいち早く察知することが出来た。なのに……布団の中で寝てなんて、いられないでしょ……? 少しは僕にも、かっこつけさせてよ……ねッ!」
態勢を立て直し、沖田は天の刃を薙ぎ払い一気に懐へと飛び込む。
「甘いな、お兄さんっ!!」
「……がはッ」
天は容赦なく沖田の腹を狙って、蹴り飛ばす。一気に間合いを詰め過ぎたため、一瞬反応が遅れる。だがそれが命取り、沖田の腹に重い蹴りが入り沖田は更に血を吐いた。
「お兄さん、もしかして病気持ち? 頑張るよね……姉様なんかのために」
「ごほっごほ……っ。そりゃまぁ……大事な子だからね」
志摩子は駆け寄りたい衝動を必死に抑えていた。自分の目の前には、怪しく笑う天と対峙しながらその大きな背中で守ってくれる沖田の力強い生き様がそこにある。