第26章 命
「またよくわからない男と一緒にいる。姉様、そんなに此処は貴方にとって居心地がいい場所なのですか?」
「私は貴方の一緒に行く気はありません!!」
「だってさ、しつこい男は嫌われるからもう帰った方がいいと思うよ?」
「ふん……斎藤一はいないの? いつも一緒にいるのかと思ったよ、姉様」
「一君を知ってるんだ。残念だけど、彼はもう新選組じゃないんだ。此処にはいない」
「それは残念……まぁ、いいか。ボクの殺す相手が、少し変わるだけ……ッ!」
沖田は後方へと志摩子を突き飛ばし、抜刀する。勢いよく振り下ろされた薙刀を、銀色の刃で受け止める。天の容姿からは想像できないほどの力に、ぐっと腰を落とした。
「く……っ、重い一撃だね。でも……ッ、これならどうかな!?」
沖田は瞬時に反撃を開始する。鋭くも早い斬撃が天を襲い、心なしか後退させているようにも見える。天はただ楽しそうに笑い始めていた。
「あはははッ! いいじゃん! あんた、名前は!?」
「沖田総司……ッ、新選組一番組組長!」
沖田の体調不良が嘘のようだ。息一つ乱すことなく、天と互角に渡り合っている。息を呑み思いで、志摩子は見守っていた。辺りに気配を探ってみるものの、幹部達の気配はない。応援を呼ぶのは難しそうだ。
「姉様はね、鬼の中でも一滴も人間の血が混じっていない純血! その力はすぐに傷を癒し、その瞳は瞬時に相手の動きを先読みする。あんた達には勿体ない人材だよねッ!?」
鈍い音と共に、まるで沖田の刀を折ろうとするかのように、天の重い一撃が襲い掛かる。だが沖田も引けを取らない。細かい隙をついて、ずいっと刃を天へと伸ばす。切っ先が、僅かに天の頬を斬った。