第21章 真
「なん……だと?」
栄は目を見開く。目の前に現れた男の姿を視界に入れると、不愉快そうに顔を歪めた。
「志摩子はお前達のような輩には渡さん」
白い襟巻が風に靡く。志摩子はその人を確認すると、名を呼んだ。
「一様!!」
「……志摩子、怪我はないか?」
志摩子を守るように、栄の目の前に立ちふさがるは斎藤だった。静かに睨みつけながら、斎藤は刃を栄へと向ける。
「貴様……っ、よくも俺の刀を」
「己の道を切り開き、導いていけるのは己のみだ。他人が誰かの運命を決められるはずもない。志摩子の未来は、志摩子だけのものだ。あんたにとやかく言われる筋合いはない」
「減らない口だな! 威勢のいい人間は嫌いじゃないぞ。だがな、俺はそういう優等生ぶっている奴が嫌いなんだよ!」
もう一本腰にさしていた刀を栄は抜き、斎藤へと襲い掛かる。斎藤は一度刀を鞘に戻すと、ぐっと構えを取る。
「俺の邪魔をするならば、いっそこの場で殺してやる! 人間っ!!」
「……参る……ッ」
斎藤が鞘から刀を抜き放ち、まさにその一瞬……――
そのたった一撃で、斎藤の剣は栄の喉元を捉えていた。
「……なんて早い居合だ……っ」
「此処で貴様が退くというのであれば、俺もこれ以上の殺生は望まん。失せろ」
「……っ、次に会う時……貴様らは後悔することになるぞ!」
栄は大きく後退すると、刀を拾い上げ姿を消した。
志摩子は緊張が解けたのか、崩れ落ちるように座り込んだ。