第20章 蝶

「あんなに目立つ行動は控えて下さい。只でさえお二人は新選組の隊士なのですから……変な人にばれたらどうするんですか」

「どうもしねぇって！」

「そん時はそん時だろ、新選組の副長がそれくらいで退いてどうする」

「だよな！　さっすが土方さんだぜ」

「お前もどっこいどっこいだよ」

「……男同士っていいですよね。いつの間にか仲直りしてしまうのですから」


　志摩子は気疲れしたように溜息をついた。


「あれ、平助君？」

「え……千鶴？」


　何故か永倉と原田といるはずの千鶴が、一人で志摩子達の方へと駆け寄ってくる。どうしてそんな事態になっているのか。


「よかった。原田さん達とはぐれちゃって、心細かったの」

「そうだったのか」

「平助様」

「ん？」


　志摩子は藤堂の背を、千鶴の方へと不意に押しやった。


「何すんだよ志摩子！」

「千鶴様をお一人にするわけには参りません。平助様は千鶴様と共に」

「お前はどうするんだよ！？」

「え？　私は歳三様とおりますので、大丈夫ですよ」

「何も大丈夫じゃない！　解決になってないからな！？　な！？」

「うっせぇな平助は。早く千鶴連れて行っちまえ」

「千鶴様、平助様をお願いします」

「え！？　志摩子まで！？」

「えっと……じゃあ、平助君行こうか？　原田さん達も探さないと……」

「……しょうがねぇなぁ」


　藤堂はわしゃわしゃと頭を掻くと、妬ましそうに一度土方へと視線を向けた。土方もその視線に気付いたのか「なんだよ」という顔で睨み付ける。