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虎と狩人

第3章 2日目



幸村...いや、虎の背中はやはり動物だからなのだろう。暖かくて眠気を誘うようだった。
私が振り落とされないようにしているのか度々立ち止まってはこちらの様子を確認したり、走るスピードを弱めたりしてくれている。
私は虎の背中になど縁が無かったので初めはどうしていればいいか分からず色々なつかまり方を試していたが、落ち着いたのは首に両腕を回し、両足で脇腹あたりをぐっと挟むこの格好。




「ん、...休憩?」

山の頂上で佐助は座り込んだ。その近くで幸村は私をおろしてくれる。
水分も十分に蓄えられそうな水源が近くにあったので竹筒に水を汲み、幸村たちのところに戻る。

「戻ったんですか」

「うむ」

初めに会った頃のように耳と尾っぽだけを残して今までの道のりで疲れを感じさせない笑顔でいた。

「すみません、重かったですよね」

「む?重さは感じなかったが...」

そういうと、私が持っていた食料を受け取って嬉しそうにそれをひらいた。
何があるのかと中身を見て小さく悲鳴をあげてしまった。まさか丸焼きの兎が入っていたなんて。

「...今時珍しいんじゃない?兎の丸焼きで驚く狩人なんて」

半笑いで佐助は私を馬鹿にしたようにみる。
仕方が無いのだ。なんせ私は初めて兎の丸焼きを見たんだから。
今迄に兎を食べたことがないというわけじゃない。
だが過保護な親なのか私が将来立派な狩人になれる様とかいいつつ、いつも調理し終わった肉を持ってくる。だから丸焼きなんてものは見たことがない。

「いや、す、すみません」

「謝ることはない、突然見せてしまって申し訳ない」

幸村はそういい、力を入れて肉を引きちぎりモモ肉の部分を私に差し出してくれた。
もう一度私は謝ってからその肉にかぶりついた。
やはり肉はとても美味しい。時間が経っているので冷えてしまうのは仕方がないことだが、冷えても美味しかった。

「あとどれくらいで着くんですか?」

「佐助」

「はいはい、多分陽が西に少し傾く頃かな。」

今陽は少し東よりにある。
というか朝食を食べていないのによくこの時間まで耐えれたものだ。それよりもずっと走り続けられている2人はとても凄いと思う。
それもそうだが、もっと気になることがある。

「獣って焼いて食べたりするんですね」

まさか一々人の姿になって肉を焼いたりするのだろうかと気になった。


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