第3章 2日目
「....殿、起きて....」
「、、ん....?」
薄く目を開いて、誰が声をかけてきているのかと確認する。
心配そうにこちらを覗き込んでいたのは幸村だった。
「あれ、ゆ、夢じゃ...」
「はい、夢ではありませぬ」
そろそろ行くんだということを伝えに来てくれたようで、私は飛び起きて簡単に櫛で髪の毛をとかす。
見渡してみれば佐助はまだぼんやりと空を見上げていて、幸村は何かを包んでいるようだ。
「それは」
「食料にござる。申し訳ないが殿が持っていては下さらぬか?」
「あ、はい」
葉っぱからは何かが焼けたような匂いがしていて少し焦げている。葉にくるんで焼いたようだ。
「東の方にある住まいは少し狭いが数人は入れる程だ。そこまでは少し距離があります故某の背に乗ってくだされ」
「え、あっいや、歩けますよ」
「急がねば日が暮れてしまうかもしれぬ」
行きますぞ、と幸村は私の腕を引いて穴蔵から外に出た。
まだ空は朝焼け状態で薄暗い。足元がようやく確認できるこの森の中で迂闊に行動しては危険な目にあうのではないのか。
と、私は穴蔵を振り返って深呼吸をしてから幸村の方を向いた。
「.....え!?」
目の前に2人の姿はなく、人間の気配もしなかった。のに、いつの間にか此方に目を向けている狐と、威嚇もせず襲ってくる様子もなさそうな虎がいた。
「幸村さんと、佐助さん、ですか」
まさかと思いそう声をかければ2人は静かに頷いた。
何故こんなことに、と考えているとようやく昨日佐助が話してくれたことを思い出した。
──...獣だ、ヒトガタに化けることができる獣
そういう意味だったんだ。
私は妙に落ち着きながらも納得して、一言お礼を言って幸村の背中に跨った。