第7章 6日目
「あっれ、凶王さん?」
「黙れ」
「ちゃんのこと警戒してたんじゃ」
「黙れっ!!」
そのやり取りは似たような形で何度も繰り返されている。そのたびに三成は顔を赤くさせて黙れと叫ぶのだ。
「三成さんて、なんだか可愛らしい方なんですね」
「心の清き御方ですので、疑い深いのもありますが素直な御心を持った素晴らしき方でござるよ」
「なんか、幸村のお友達って感じがして安心しました」
ただ怖いだけの人間なんて、きっとこの世にはいないんだろう。怖いだけだと感じてしまうのはただ外見や第一印象で決めつけてしまうのだ。
「私も生き方を考え直さなきゃなって思いました」
「殿がですか?」
「はい、私は自分に素直に生きた経験が少ないんです。」
いつもだれかが敷いてくれたレールの上を決まったように走り続けて、必ず乗り越えられるような試練ばかりに挑んできて、いうならば凸凹のないつまらない人生だった。
だけど、こうして幸村達とであい、全く経験することもなかったことをして、如何に自分が未熟で情けないかを思い知らされたのだ。
私が幸村達の立場なら耐えられずにどうにか死ぬ方法を考えながら苦しみ、悶えて生きるだろう。
「某等は弱き動物だ」
「それは私達もです」
完璧な生き物などこの世には存在しない。
必ず一つや二つ弱点はあり、それを晒しながら生き、認め合うのが強い生き物なのだろう。 ある意味、スキを見せるといつのも強さの一つだ。
「ちょっとお二人さん?なに話してんのさ〜」
「客人を放っておくとはどういうことだ!!」
風魔は横で溜息をついていた。
「えっご、ごめんなさい!」
「募る話もあるだろうけどさ、今日はたくさん食べてやってよ」
なんと佐助は腕をふるい、豪華な食事を用意してくれた。
昨晩は人間に化け、近くの村から野菜を貰ってきたらしく、それでサラダを作ってくれた。
「俺様張り切っちゃったよ!」
なんと風魔と一緒に作ったのだという。先ほど風魔が教えてくれた。
「忍って万能ですね!」
「やめて!忍の仕事じゃないから!!」
「流石だぞ佐助ぇっ!」
「味もなかなかだな」
「げっもう食ってる!?」
もさもさ野菜や肉をほおばりながら褒め続ける幸村と三成。
なんだか家庭みたいで見ていてとても面白い。