第7章 6日目
ぴたり。
風魔は突然足を止めた。それは何故だろうか、後少しで小屋が見えてくるであろう見慣れた道だった。
「なにかありました?」
「如何されたのだ?」
幸村も疑問に思ったようで、すん、と鼻を一度鳴らした。周囲の空気を嗅いでいるのだろう。
「....!」
なにかわかったのか、耳をぴくりと動かして今度は物音を探っている。
「...誰かいるんですか?」
当てずっぽうでそう言うと幸村と風魔は同時に頷いて小屋の方向を見つめた。
「......っ!石田殿にござるよ!!」
虎に姿を変え、物凄い速さで小屋へと走って行ってしまった。
それを呆然と見ていた私は風魔を見上げ、
「は、走りましょうか!」
小走りであとを追った。
小屋につくと扉は開けっ放しで、中からグルルル、と喉を鳴らすような声が聞こえていた。
「ど、どうもー...」
こっそり中を覗いてみると、人間の姿でイスに座る三成と、三成にじゃれついている幸村...虎がいた。
「...こんにちは」
「...!」
私の姿を見て、三成はふいと視線をそらした。まだ慣れていないのは仕方がないのだろうがなんとなく傷付く。
「ええと...」
「.........明日だと聞いた」
「え?」
「だ、だから!明日帰るのだと聞いたと言ったのだ!」
「見送りに来てくださったのですな!?」
「仕方なくだ!真田の友なのだろう、な、ならば私の...と、友のようなものだろう!?だ、だから仕方無くだな!!」
人間の姿になっていた幸村は三成に嬉しそうに抱きついてにやにやしている。
私もそれにつられてニヤついてしまった。
「なっ...女!!何故笑う!」
「す、すみませんっ」
直視出来ずに左を向く。
「...あり、がとうございます、石田さん」
「.......三成で構わん」
ぼそ、と、私に聞こえるか聞こえないかぎりぎりの声でそう呟くと銀猫に戻ってしまった。
「殿っ良かったですなぁ!」
「はい!」
まさかの来客で驚いていたら、度重なるまさかで仲良くなってしまった。心を許してくれたということだろうか?
「佐助もそろそろ戻りましょうっ、沢山お話致しましょうぞ!」
風魔も頷き、私も頷いた。三成はふいとまた視線をそらしたが、それも了承したと言う意味なのだろう。