第7章 6日目
「あっ風魔殿ー!」
どこまで目がいいのだろうか。私には見えないのだが東の空に向かってぶんぶんと手を振っている。
私が目を凝らしても全く見えないのだから、相当遠くにいるだろうに。それか匂いなのだろうか?
「おわっ」
ひゅん、と小さく風が音を立てると私の真横に風魔が立った。
「み、見回りは終わったんですか?」
終わった、そう口を動かしてくれた。
生憎私は読唇術を心得ているわけじゃないので長い会話は読み取れないが、とうした短い返事はなんとなくわかる。
「お疲れ様でした」
風魔は首を横に振った。
「む?佐助が見当たらぬが...」
すると、また口をぱくぱく動かして幸村に何かを報告しているようだった。幸村も読唇術を使える様だ。
「おお、そうであったか!」
うむ、と頷いた幸村は私を見て話した。
「佐助は殿の村を見つけたようで、偵察をしているようでござる」
「わ、私の?」
「はい、なんでもそなたの名が聞こえたのだとか」
まぁ明日帰るのだから、そう名前が出ていておかしくないだろう。
そうか、明日帰るのか、と、また寂しい気持ちになってくる。
「....明日、ですな」
幸村もまた、悲しんでくれるようだ。風魔は私の右肩をぽん、と軽く叩いて元気づけてくれようとしている。
「...もう、帰りましょっか」
「宜しいので?」
「はいっ、のんびりと沢山お話したいですしね」
幸村も風魔も、嬉しそうな雰囲気を醸し出しながら頷いた。
「佐助はあとどれくらいで此方につくかわかるか?」
すると私にもわかるように、まだかかるだろう、と口を動かした。
まだかかるのならば先に小屋に戻って待っていた方がいいだろうと、先程撃ち落とした鳥を片手に小屋へと歩を進めた。