第5章 4日目
「おかえりなさい旦那、ちゃん」
佐助は布団を干し終わった所らしくて、手を洗っているところだった。
この小屋にはある程度人間が暮らして行ける設備が整っている。
お風呂はないけどトイレやキッチン、簡易なものではあるけど使えない事はなかった。だから私もこうして料理をしようなんて考えられる。
「今日は、私に作らせてください」
「え?いいよ、好きでやってるんだし」
「私もやりたいんです。好きで」
そう言うと佐助はそっか、と言って外へ出ていった。おそらく散歩にでも出かけたのだろう。
幸村は未だ私の横につきっきりで手元を覗き込んでいる。
「...料理は、得意なほうですよ?」
「違いまする!疑っているわけでは!!」
ならなんで、と目で訴えると幸村は目をそらしてぼそぼそと言った。
「...手伝いたく」
「そういうこと、ですか」
なんだ、疑ってたわけじゃないのか。私はなんとなく気分が良くなってつい笑ってしまった。
「某では、務まらぬでしょうか!?」
「ま、まさか!」
とはいいつつも、やってもらいたい事は何一つない。全部非力な私にもできる作業ばかりだ。
何をたのもうか、何を...と、考えようやく思いついたのは
「机のうえ、片付けてもらっていいですか?」
「承知した!!」
嬉しそうに頷いた幸村はすぐに机の方に行った。
ふぅ、と溜息をついて山菜の調理をする。満足できるものができるだろうか、...なんとかなるだろう。
「はいっできました!」
「おお!まこと美味そうなっ」
「へぇ、すごいね!」
皿がわりの葉っぱの上に調理がすんだ山菜サラダと薄くスライスした肉を綺麗に並べた。
「こんなものですみません」
「十分だよ、ねぇ旦那!」
「ああ!では、早速!」
かぶりつく様に料理を楽しみ、豪快に食べる2人は見ていてとても楽しい。こんなことが、今まであっただろうか。
「む、殿?」
「いや、何でもないです」
私も手を合わせてから食べ始めた。うん。我ながらに美味しくできたと思う。