第4章 3日目
草木も眠る丑三つ時。
「何のつもりだ」
俺は
「...別に変なこと考えてるわけじゃないさ」
ただ、と目の前で笑う人物は俺の良く知る友だ。
「手にしたい、そう思ったんだ」
金色に光る目の持ち主、佐助。
佐助はこの時間になると完全なる人間へ化けることができる。俺もそうなんだが、無駄な力はまだ使いたくない。
「恩を仇で返すとは、このことか」
「そりゃ感謝してるよ。死に際まで追い詰められた俺を救ってくれたんだから」
俺は初めて、佐助を恐ろしい男だと感じた。
「....ッ、佐助!」
「そうムキになんないでくださいよ、俺だってこんな気持ちは久しぶりなんだ」
本気で誰かを想う気持ち。
「打ち明けた俺が馬鹿だというのか」
「何いってんだよ、俺は嬉しいんですって。ねぇ?だってあの初で有名な旦那が惚れた腫れたの話を持ち出してくれたんだから」
「ならば!」
「だからってそれを応援するかしないかはこっち次第、そうだろ?」
俺は、一目で恋をした。所謂一目ぼれ。
それこそ惚れた腫れたの話など一切興味はなかったし、そんなことに気を取られるほど余裕にまみれた生き方などしていないと思っていたのだ。
しかし、それは違ったようだ。
俺は、...を見て、怯えて猟銃を抱える様を見て、なんと美しきおなごなのだろうと、己の目を疑った程だった。
まだ共にいる時間は少ないが、俺の心がを求めているのは自覚していた。
だから、俺は、相談したのだ。
──恋とはなんだ
佐助は驚いた顔をして、教えてくれたのに、こんな形で裏切られるなど...
「恋ってのは油断してたらばっさりだぜ」
こんなの、不公平すぎるであろう...
全く免疫のなかった俺が、佐助に勝てるはずもない。このよに神がいるならば、なぜ俺の目の前にだけあの美しき女神を出してくれなかったのか。問い詰めたい。
「...俺はっ、俺は!!!」
「譲るつもりはないぜ、好きな女を譲るなんて、そんなことできないんだ」
苦しそうな、それでいて勝ち誇ったような笑顔を浮かべて闇に消えた。
1日で彼女の心を確実に掴んだ。俺は出遅れたのだ。勝てる筈がない。
「....いや」
やってみなければ、わからぬか。
まだ日はあるのだ。半分しか過ぎておらぬではないか。
明日が勝負の日だ。必ず、俺のものにして見せる。