第4章 3日目
「遅かったな」
小屋につくと幸村は先についていたようで、つまらなそうに自分の尻尾で遊んでいた。
「聞いてよ旦那!ちゃんが初めて獲物をとったんだ」
「初めてじゃないですよ!」
もー、と佐助の肩をぽんっと叩いた。
「...な、仲良くなったのだな!」
「ちゃんてさ、難しい子かと思ったんだけど案外、ね」
「なんですかそのねって」
「頭がちょっとね?って意味かな」
なんだか子供らしい笑い方をする人だなと思った。うん、きっとこれが本来の佐助の姿なんだと思う。
どうして塞ぎ込んでいたんたろうか。
「うむ、某、...安心致したぞっ」
そうか。私達が奪っていたんだ。私達が、何もかもを塞いでいたんだ。
「佐助さん、優しい方だったんですね」
「今更気付いたの?」
お互い笑いあって、こんな優しいなんて。こんなあたたかい気持ちになったのは久々だし。村ではこんなにあたたかくされたことはとても稀だったし。
「某も共に参りとうござる!」
「もっ、勿論っ!!」
こうして仲良くなっていくんだったら一緒に狩りに行くのもいいのかもしれない。
散歩がてら、そう言う事にしておこうかな。
「じゃあ明日、どうでしょう?」
「はいっ!」
幸村はやっぱり、虎というより猫というより断然犬だと思う。こんなこと口が裂けても言えないが、嬉しいと目をキラキラさせて尻尾をバタバタ振る姿はどんな犬よりも犬らしい気がする。
「私、水浴びしてきますね」
「はいよー」
「承知致した!」
服をまとめて外にある井戸に向かう。
水浴びはお風呂の代わり。一週間もお風呂には入れないのは女子として許されないだろうし、他人が許したとしても私が許さない。絶対。
「にしても、なんだろ」
幸村のあの時の一瞬曇った表情。不安な衝動にかられた。
「なんかしたかな...」
なんて考えても思い当たる節は何一つなく、水浴びをゆっくりと済ませる。
佐助を一日独占してしまったようなものだから、嫉妬でもしてるんだろうか。だとしたら凄く申し訳ない。
素直に謝るべきだろうが、違ったらなんか恥ずかしいし、確信を得てから謝るのも遅くない。