第4章 3日目
「俺様さ、アンタら人間が嫌いで羨ましいんだ」
「それは、」
「この世に生きる生物の中で一番強いだろ?だからだよ」
佐助は俯いた。私達人間が羨ましいっていうのは嘘じゃないみたい。
「でも、貴方達だって強いです。こうして、森の中で生きているし」
「強いったって所詮は動物さ。一部は俺様達みたいに化けれる奴らもいるけど大半は前足と後ろ足を動かして生きてる。物の発展も遅い」
こんな銃は作れない、悲しそうに言う。
「だからこそ羨ましいんだ。けど、それで俺様達が壊されるのは嫌だ。嫌いだよ」
佐助は言う。
人間なんて所詮、壊すことでしか生きられないただの動物なんだって。
でも、でも、私みたいなやつだっている。壊すことを恐れて、どうしても生命に手をかけられない奴。
「アンタは、どう思ってるの?」
「...?」
「人間を、どう思ってるのって」
人間である私にいうか、と突っ込みたかったけどそんな雰囲気じゃない。
「私は...同じだと、思ってます」
「俺様達と同じだって、こと?」
座り込んで、木々が生い茂っている空を見上げた。
「貴方達だって私らの家族を奪ったり壊したりするでしょう?」
黙り込んだ佐助。きっとわかっていたんだと思う。一方的にやられてるわけじゃないと。
でも、自分を正当化したくて仲間がやったことを思い出したくなくて、人間を敵に回してたんだろう。
よく考えてみれば、私達人間だって動物なんだ。
「...ごめん、なんかわからなくなっちゃってさ」
ほら、こうやって不安になるのも、みんな同じなんだ。
「自分が可愛いのかもしれない」
膝を抱え込んで、曇った声を出す。
「私も同じです、多分」
もしかしたら、私も佐助と同じなのかもしれない。
私だって、自分が可愛いんだ。自分が傷つくのが怖いんだ。その気持ちはどんな生き物にだってあるはず。
いつだって自分が正義だと思っていたくて、まわりを悪だと思っていたくて。いつの間にか一人になってたりする。
殺すことによって周りと同じ悪になるのが怖くて、その猟銃で殺せない。
「似てる、かもね」
「...似てますね」
なんだかおかしくなってしまって、佐助と顔を見合わせて笑い出した。
きっと佐助も私も、悪になって壊すのが怖いから互いを敵だと思ってしまうんだ。
ちゃんと分かり合えればこうやって笑えるんだ。
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