第4章 3日目
「ッーー!」
何度目だろう。
「あー.....だめだ...」
パンッ!!
「....っはぁ」
呼吸を止め、獲物を見つめ、引き金を引く。
それだけの単純な作業なのにやはりどうしても慣れない。慣れたくないないだけかもしれないけど。
慣れたくない、というのはお父さんの意思に反したいというわけじゃない。いや寧ろ、お父さんを尊敬してるのに、なぜだかお父さんのようになりたいと純粋に思えない。
それは、銃の引き金をひき、簡単に生き物の命を奪うということに慣れたくないんだ。
「...こんなんじゃ、駄目なのにね」
幼少期からお世話になってる猟銃を抱き抱えてまたため息をつく。
いい加減私達人間が生きるのに逆らえない行為には慣れなければならない筈なのにどうしてもできない。
目の前で、散りゆく様を見たくない。
「....狩り、したくない」
わざと標準を外して、鳥を逃がしたり兎を逃がしたり、私は何度それを続けているんだろう。
「...っ」
不思議と目頭が熱くなって、それが涙となって急に溢れ出てきた。
もうやだ、なんで私はこんなことをしているんだろう。なんで私の手で命をもぎ取らねばならないんだろう。
幼い頃、お父さんのあとについていってしまった自分を思い切りぶん殴りたい。
「へぇ、銃って意外と簡単に使えるんだね」
「え?」
「かして?」
明らかに私ではない人の声が聞こえて振り向くと、銃を見つめる佐助がいた。幸村との用事は終わったんだろうか。
「やだな、別にアンタを殺そうなんて思ってないよ」
ただ興味が湧いただけだよと、つかみどころのない笑顔で私に微笑みかける。
彼は、苦手だ。
「ほら、かしてみ?俺様にもできそうだし。構え方教えてよ」
パンッ!!
「っ.....ぁあ!なんだこれっ凄い反動だね」
ふぅ、と佐助は何発かうつとやっと銃の構えを解いた。
どうやら佐助には才能があるらしくて、私だって綺麗にできない構えもまるでやった事があるかのように自然にやってのける。
「...大変なんだね」
ぽつり、そう零した佐助の言葉に耳が反応した。