第3章 2日目
「ここにござる!」
やっとついたんだ、と顔を上げるとそこは私が泊まろうと思っていたあの小屋だった。
「はて...佐助、掃除でもしたのか?」
「いいや?してないけど」
私がしてしまった、そう言うべきなのかと迷っていると佐助は私の顔をじっと見つめて近付いてきた。
「......」
「っ!?」
突然私の腕を掴み、手首をすんすんと鼻を鳴らして匂いをかいだ。
なにか臭かったのだろうか、やはり水浴びもしていないから臭っていたのなら申し訳ないとおもっていると佐助はため息をついた。
「アンタか、掃除したの」
「え?」
「匂い。ここの小屋に残ってたんだよ」
そうだったのか!と横で幸村は嬉しそうに尾っぽをぶんぶんと振った。その姿はまるで犬だ。
「え、す、すみません勝手に...」
「いや、前から聞いてはいたんだ。ここに人間が出入りしてるってのはね。」
「顔を合わせずとも共存しているとは、なんとも面白い事だな」
「...はい」
幸村、私、佐助の順番で小屋に入り、戸締りをしっかりとする。
一日置いておいたくらいでは汚くなどならず、ホコリも無くキレイなままだ。
「殿、某らは狩りにいってまいりまする。そなたは此処で待っていて下され」
「わかりました」
私だって狩りはできる。というか修行なのだから出来なくともやらなくてはならないのに幸村は私を外に出してはくれなかった。やはり傾きかけた陽の下で女が一人で歩くのは危険だと思ったからなのだろうか。
「佐助っ参るぞ」
「はいはいっとー」
驚くほどの早さで、いつの間にやら2人は何処かに行ってしまった。恐らく山の闇へと溶け込んだんだろう。
「1人、か」
猟銃を磨き、汚れを拭き取る。
また今日一日猟銃の引き金を引かなかった。引く理由がなかったのは当然だが、なんだか気が進まなかったのだ。
「失格だなぁ...」
椅子に座り、机に突っ伏すといつの間にか寝てしまった。