第5章 ++何を思っていたのだろう++
「無いならそんなにオドオドするな!」
ピシャリと言い放てば、弾かれたように背筋が正される。
「お前がどんな任務でも真面目に取り組んで、きちんとした成果を上げられる忍だということをアタシは知ってるよ」
だから自信を持ちなと言えば、テンテンは満面の笑みを浮かべて頬を染めた。
しかしすぐ表情を引き締めると、次の言葉を待ちかまえる。
「さて…今日は聞きたい事があってお前を呼んだんだが…」
手元の資料にある、金髪碧眼の少女の顔写真に目を落とす。
「マイト•アレスについて、幾つか教えて欲しい」
「………ガイ先生には、この事は?」
「聞いていない」
ガイは、嫁の事となると頑なに守りに入る。まるで悪い虫を寄せ付けないように…里の幹部の目に止まらないように、自分の背後に隠しておきたいらしい。
しかし、ガイほど実力ある忍が子孫を残す相手に選んだ人物である。
興味があろうと無かろうと、遺伝学の観点からも相手の情報は調べ上げられるのだ。
もちろんガイは嫌がるだろうから、こうして部下を呼び出して情報の精査を図る。
それを理解しているテンテンは、神妙な顔つきになり頬を硬くした。