第5章 ++何を思っていたのだろう++
息をするのも咽せ返るような夏の日。
五代目火影の名を冠する綱手は、額から滴る汗を拭いながら手元の資料を眺めていた。
──コンコン。
執務室の扉が、遠慮がちに叩かれる。
「入れ」
「……失礼します」
短く促すと、扉の影から姿を現したのはガイの所の班員であるテンテン。その顔は、単独で火影に呼び出された不安と緊張感がありありと浮かんでいた。
「そんなに畏まるんじゃないよ。楽にしな」
「は、はい…」
普段の威勢はどこへやら。妙にそわそわと落ち着きがない。
コイツ、何か隠し事でもしてるのかと妙な勘ぐりを入れた矢先に、テンテンの方から口を開いてきた。
「あの…ガイ先生の事で何か?」
「ガイ?アイツなら、雲隠れの里に遠征中だろう?」
「…じゃあ、リーの事ですか?まさかまた怪我したとか!?」
「リーの無茶は変わらずだが、さっき見た時は屋根づたいに逆立ち歩行していたな」
「……それなら、ネジに何か?」
「それも問題ない」
中忍に昇格して間もなく、人手不足の煽りを受けて上忍となった日向ネジ。
技術はあれど、若さと経験不足からメンタル面が心配されたが、まずまずの成果を上げている。
「………あたし、何かしました?」
「した覚えでもあるのか?」
「ない…と思いますけど…」
火影に呼び出された理由にてんで検討が付かずに、テンテンは身を縮こまらせて上目遣いに様子を伺う。