第4章 ++たくさんの不安に堪えていた++
「うん…」
アレスは生返事をするだけで、ぼんやりとオレの顔を見つめている。
オレは何も言わずに、アレスの掌をさする。
「……ねぇ」
「ん?」
「無事に帰って来てね」
「当たり前だ」
「早く…帰って来てね。浮気とか、しないでね」
不安げにボソボソ話すアレスの言葉に、思わず前につんのめってしまった。
「浮気なんぞするはずないだろう!!」
考えもしなかったせいか逆に驚き、自分で思ってた以上の声が出た。
「家にこんなに可愛い妻が待っていて、浮気する男は人間じゃない」
「そこまで言う?」
「あぁ。オレは浮気をする人間は信用しない事にしている」
カカシの様にモテ男がとっかえひっかえ女性を相手にしても、特定の相手を作らずに割り切った遊びなら、それはまぁそういうスタンスなんだと理解する事にしているが。
オレの場合は、守ると決めた女性を傷つけるような事はしない。
泣かせたくないのだ。
しかし、目の前には今にも泣きそうなアレスがいて、オレはほとほと困ってしまう。
「アレス、何が不安なんだ?はっきり言ってくれないと分からない」
「…怖いの」
むくりと起き上がり、アレスが抱擁を求めて来たのでオレは抱き締める。