第3章 ++いつもオレに幸せをくれていた++
「でも、私は皆の事家族だと思ってるわよ」
アレスは自分の器に具をよそいながら、唐突にそんな事を言った。
「ガイはリーやネジ、テンテンの事を我が子同然に思ってる」
「その通りだ」
海老の殻を剥きながら頷くオレに、アレスはくすりと笑った。
「だから私にとっても、皆は家族だし、大切な存在なの」
美味しいご飯を食べさせてあげたい。
少しでも寛げる空間を作って出迎えたい。
笑顔で、元気で、健康でいて欲しい。
「私は一般人だから忍の苦労は分からないし、皆とは一線が違うけど…」
箸を置き、真摯な眼差しで皆の瞳を見つめた。
「あなた達の“帰るべき場所”になれるように、頑張ってるつもり」
「アレスさん…!」
感動屋のリーは、アレスの言葉に涙を拭いている。
オレはその言葉に、ふとアレスが疎外感を感じているのではないかと思った。
確かに、アレスは一般人であり、ガイ班が共有するような任務の情報や修行法、暗黙の了解などには入り込めない位置にいる。
彼女は聡いから、内輪だけの話に理解はしていても、それでもやはり除け者という寂しさを感じているのではないだろうか。
もしかしたら、ガイ班に馴染んでいると思ったのは表面上だけで、アレスは未だにもがいているのではないだろうか。
それほどまでに、忍と一般人の隔たりは大きいものなのかも知れない。